民法が120年ぶりに改正、というニュースを聞いたことがあるでしょう。

しばらくは「改正案」と紹介されていましたが、もう「案」ではなく決定事項となりました。

昨年5月26日に参院を通過・成立して6月2日に公布されました。実施はいつから?というと、

公布から3年を超えない範囲内とされており、現段階では、2020年1月か4月に施行されるとする見方が有力です。

この民法改正が大家さんの賃貸経営に及ぼす影響についてレポートします。

民法改正のイメージです

民法が120年ぶりに改正

この改正が賃貸経営に与える影響を、大きく2つのポイントで解説いたします。そのポイントは、

1.敷金の定義が明確になり原状回復ルールが盛り込まれた。
2.個人の連帯保証人の取り扱いに制限が設けられた。
先に結論から言いますと、原状回復負担について国土交通省ガイドラインの通りに実施していて、

連帯保証は保証会社を利用している大家さんには、ほとんど影響を受けないと言っていいでしょう。では、そのポイントの解説です。

ポイント1

敷金の定義が明確になり原状回復ルールが盛り込まれた。

敷金の定義について改正民法には以下のように明記されています。

”賃貸借契約が終了して明け渡しを受けたとき、家主は敷金から賃借人の債務を差し引いた額を賃借人に返還しなければならない。”
読んで頂ければ「当たり前のことじゃないか」と思われることでしょう。

この条文はほとんどの賃貸借契約書に盛り込まれていますから従来と変わらないのですが、敷引き特約を使っている契約は注意が必要です。

改正によって敷引き特約が禁止された訳ではありませんが、敷引きを否定した最高裁判決(最高裁平成23年3月24日判決)もありますので、

今後の条件をどうするか、検討が必要です。

原状回復ルールの変更点は?

原状回復ルールについては、賃借人は通常損耗(通常の使用によって生じた傷や経年劣化)については原状回復義務を負わないことが明記されました。

この条文も国土交通省のガイドラインと同じなので特に新しい問題はありません。

ただし通常損耗について、ルームクリーニングや、畳の表替えの一部負担などを借主の負担とする特約を設けている賃貸借契約がありますが、

その約定が民法改正後に否定されるわけではありません。民法は強行規定ではありませんので、契約自由の原則は生きています。

ここまでは民法改正による問題は特にないのですが、気になるのはマスコミの対応です。

民法改正の施行が近くなると「敷金は必ず返ってくる!」「敷金を返さない悪徳大家」のような誤った報道がされて、

誤解した借主からクレームが増えることが予想されます。新規で契約する入居者にも誤解のない説明が必要になります。

ポイント2

個人の連帯保証人の取り扱いに制限が設けられた。
どのような制限かというと、ズバリ、「極度額を設定する義務」が家主側に課せられました。これは、先に紹介した敷金とは違い重要なポイントになります。

具体的には賃貸借契約で個人の連帯保証人を付けるときは、契約するときに極度額(連帯保証人の負担する限度額)を定めなければならないことになりました。

極度額を定めていない連帯保証条項は無効とされてしまいます。つまり、実際に滞納が発生したときに連帯保証人に請求できなくなってしまいます。

このため改正民法が施行された後は賃貸借契約書に、連帯保証人の責任限度額としての極度額を記載することが必要になります。

その極度額をいくらに設定するか?については、民法改正に特に記述はなく、大家さんと連帯保証人の間で合意した金額を自由に設定することになります。

大家さん側からの立場からすると極度額は「多ければ多い」ほど良いでしょう。

悪質な借主が滞納したときは、裁判の長期化と、未回収賃料の損失が多額になる可能性があります。

滞納発生から明け渡しまで1年半くらいかかることもあります。このリスクを担保させる為には、極度額は「1年半の家賃額程度」が必要となります。

家賃8万円の物件なら極度額は144万円がイメージです。

ただし、連帯保証人に保証してほしいのは家賃だけでなく、原状回復費用や事故による損害賠償や火災による損害等も予定しておく必要がありますので、

万一の場合は「1年半でも足らない」ことになるでしょう。

だからと言って、極度額が高額になると連帯保証人が保証に応じないということもあります。

個人の保証人をとるときは、この極度額のバランスを十分に考慮して決める必要があります。

「連帯保証人への情報提供義務」という大家さんの義務が追加

店舗物件や事務所などの事業用賃貸契約では、借主から連帯保証人に対して「借主の財産状況を情報提供すること」が義務付けられました。

これは、連帯保証人が連帯保証債務を引き受けるにあたり、借主にどの程度の財産があるのか把握する機会を与えることで、

連帯保証人を引き受けるかどうかについて十分に検討させようとするものです。

もし借主が情報提供しなかったことで、連帯保証人が財政状況を誤解して保証人を承諾した場合で、

さらに大家さんが、借主が情報提供義務を果たしていないことを知っていたり、知らないことに過失があった場合は、

連帯保証人は連帯保証契約を取り消すことが出来る、という決まりです。

借主が連帯保証人への情報提供義務を果たしていない場合、大家さんとしても連帯保証人から連帯請求できなくなるという、

重大な問題が起こりますので注意が必要です。なお、この義務は居住用の賃貸借契約には適用されません。

さらに、連帯保証人からの問い合わせに対する大家さんの回答義務も新設されました。

大家さんは連帯保証人から、借主の家賃の支払い状況について問い合わせを受けたときは、遅滞なく回答することが義務付けられました。

この違反に罰則はありませんが、回答していないと、連帯保証人に滞納家賃を請求したときに回答義務違反を指摘されて、

請求に支障が生じることも考えられますので、問い合わせを受けたときは回答した方が良いでしょう。

さて、賃貸借契約の個人の連帯保証人の制限について理解してみると、「保証会社を利用したときはどうなるのか?」という疑問が浮かんだと思います。

実は、今回の民法改正では、法人を保証人とする場合は極度額を設定する義務は適用されませんので、

賃貸借契約書に特約を追加する義務は適用されませんので、賃貸借契約書に特約を追加するという面倒は不要です。

借主から連帯保証人への情報提供義務も適用されません。

そのため今後は、ますます、個人の連帯保証人から保証会社への移行がが進むのではないかと言われています。

保証会社の利用状況は全国各地で大きなバラつきがありますが、今後は多くの賃貸借契約の連帯保証に保証会社が採用されていくとみられています。

そのときは、保証会社が保証していない、借主が原因の火災による損害や、貸室内での事故(自殺など)による損害のカバーをする為に、

新たに保険に加入するなどの対策を立てる必要があるでしょう。

改正民法の施行は、まだ少し先の話ではありますが、その内容については理解して頂きたいと思います。

投稿者プロフィール

azousan
azousan代表取締役
アゾウ不動産販売㈱代表の阿座上です。東京都府中市で小さな不動産屋を営んでおります。京王線東府中駅周辺に特化して営業に励んでおります。毎日オーナー様向けに様々な情報を提供して行けるようにブログを書いています。ご興味が少しでもお有りでしたら読んで頂けると幸いです。自社の公式ブログではお客様向けのコンテンツを発信しています。